菖蒲湯|香りを移す習慣

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菖蒲湯(しょうぶゆ)は、菖蒲の葉を湯に浸し、その香りを移した湯に身を浸す習慣です。五月五日の端午の節句に行われてきたもので、香りをまとうことで心身を整えるという営みが、今も暮らしの中に息づいています。

菖蒲の細長い葉は強い香気を持ち、その匂いは湯気とともに立ちのぼります。古くからこの香りには邪気を払い、身を清める力があると考えられてきました。もともとは山野に自生する薬草として、身に帯びたり湯に入れたりと、日々の健やかさを支えるものとして用いられてきた歴史があります。

この習慣の背景には、香りによって災いを遠ざけるという感覚が見られます。蛇の子を身ごもった娘が菖蒲湯によって難を逃れたという伝説が各地に残るなど、物語の中にもその受け止め方が表れています。

また、そのルーツは中国の「蘭湯(らんとう)」にあるともいわれます。もとは藤袴(ふじばかま)の花蕾をつけた全草(蘭草)を用いた風習が、日本へ伝わる過程で菖蒲へと移り変わったという説です。時代や植物が変わっても、「香りを移した湯に身を置く」という行為は共通しています。

湯に香りを移し、その中に身を沈める。そのひとときに、この時期ならではの空気が静かに重なります。

 

撮影:ensata / PIXTA

参考文献

茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース

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