
四月三十日ごろから、七十二候「牡丹華」となります。牡丹の花が大きくひらきはじめる時期を表した言葉です。重なり合う花びらがゆるやかにほどけ、豊かなかたちを見せるその姿は、春の終わりを象徴するもののひとつとされています。
牡丹は中国を原産とする花で、日本には奈良時代に薬用植物として伝わったとされます。のちに観賞用としても広まり、大ぶりで存在感のある花をつけることから、「百花の王」とも称されてきました。古くから絵画や工芸の題材としても用いられ、文様としての牡丹は、華やかさだけでなく、豊かさや繁栄の象徴として扱われます。茶道具においてもその意匠は広く見られ、青磁の香炉や水指などでは、文様を浮き上がらせた「浮牡丹手」の作例が知られています。
この時期に咲く牡丹は、気温の上昇とともに一気に花を開きます。つぼみの状態から、短い時間で大きく姿を変える様子には、季節の移り変わりの早さが表れています。
花の盛りは長くは続かず、咲ききったあとの姿にもまた移ろいが見て取れます。「牡丹華」という言葉には、そうした一瞬の充実をとらえる感覚がよく表れています。
撮影:tuo / PIXTA
参考文献
『淡交新書 茶の湯の銘 季節のことば』淡交社
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
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