秋刀魚(さんま)
秋刀魚は、細長い体と銀色に輝く姿が特徴の、秋を代表する魚です。北太平洋を広く回遊し、日本近海では秋になると北海道沖から南下してきます。
長く「庶民の魚」として親しまれてきた秋刀魚ですが、近年は漁獲量の少ない年が続き、以前のように気軽に買えないこともあります。
脂ののった秋刀魚は塩焼きがおなじみ。そのほか蒲焼きや生姜煮(しょうがに)、身を細かくたたいて薬味と合わせたつみれ汁など、料理法もさまざまです。
地域に根づいた食べ方の一つが、紀伊半島に伝わる「さんま寿司」です。奈良県十津川村では、村の北部に秋刀魚と米を漬け込んで発酵させる「なれずし」、南部に酢で締めた秋刀魚を酢飯にのせる「押し寿司」が伝わり、ハレの日に食べられてきました。
一つの村の中でも作り方が異なるさんま寿司。秋刀魚の味わい方には、土地ごとの工夫が息づいています。

撮影:freeangle /PIXTA
松茸(まつたけ)
松茸は、独特の芳しい香りと歯ごたえを持つ、秋のきのこです。赤松などの林に自生し、生きた木の根と共生して育ちます。この関係を人工的に再現することは難しく、天然の恵みに頼る食材。なかでも希少な国産物は、高級品として扱われています。
傘がまだ開いていないものは「つぼみ」と呼ばれ、締まった姿や歯ごたえが好まれます。焼き松茸や土瓶蒸し、松茸ご飯など、香りを生かした料理が代表的です。土瓶蒸しでは、まず出汁に移った香りと旨味を味わい、それから松茸そのものの食感を楽しみます。
松茸と鱧の取り合わせも、秋の料理として親しまれてきました。旬を迎えはじめた「走り」の松茸と、季節の終わりを惜しむ「名残り」の鱧。こうした季節の食材の取り合わせを「出会いもの」といいます。

撮影:ykokamoto / PIXTA
サツマイモ
サツマイモは、秋に収穫を迎える芋です。掘りたてのみずみずしいものから、貯蔵して甘みを増したものまで、時期によって異なる味わいを楽しめます。
日本に広く普及したのは江戸時代のこと。中国から琉球などを経て伝わり、薩摩をはじめとする南九州で栽培が盛んになりました。関東では青木昆陽(あおきこんよう)が栽培の普及に努め、やせた土地でも育つ作物として、飢饉の際に人々の暮らしを支えました。
サツマイモの甘さには、加熱の仕方も関わっています。熱を加えると、芋に含まれる酵素がでんぷんの一部を麦芽糖に変えるため、じっくりと火を通した焼き芋は甘みが増すのです。
ほくほくとしたもの、しっとりとしたもの、ねっとりと甘いもの。品種によって食感も異なり、焼き芋や天ぷら、炊き込みご飯、菓子など、幅広く用いられます。芋羊羹や茶巾絞りにすれば、素朴な甘みを楽しむ茶席の菓子にもなります。

撮影:チリーズ /PIXTA
かぼちゃ
かぼちゃは、収穫の時期と食べ頃が必ずしも重ならない野菜です。夏から秋に収穫されるものが多く、貯蔵することで甘みが増すものもあります。秋は、収穫を終えたかぼちゃの味わいを楽しめる季節です。
かぼちゃには、大きく分けて日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、ペポかぼちゃがあります。普段、店先でよく見かけるのは西洋かぼちゃで、甘みが強く、ほくほくとした食感が特徴です。細長い姿からかぼちゃとは思いにくいズッキーニも、実はペポかぼちゃの仲間。ペポかぼちゃには、ほかにも食用の金糸瓜(きんしうり)や、観賞用の小さなかぼちゃなどがあります。
一方、日本かぼちゃには、きめ細かな果肉と粘りのある食感を持つものが多く、甘みも比較的穏やか。宮崎県の「日向黒皮かぼちゃ」などが知られ、出汁を含ませる煮物にも向いています。
煮物や天ぷら、汁物のほか、裏ごしして菓子にするなど、食べ方もさまざまです。種類による味や食感の違いを知ると、料理に合わせて選ぶ楽しみも広がります。

撮影:freeangle /PIXTA
りんご
りんごは、品種によって収穫の時期が異なり、夏の終わりから晩秋にかけて、さまざまな品種が出回ります。なかでも十月頃は、「紅玉(こうぎょく)」や「ジョナゴールド」「陸奥(むつ)」「秋映(あきばえ)」など、多くの品種が収穫期を迎える時季。味や香り、歯ざわりの異なるりんごを食べ比べるにも、よい季節です。
りんごは品種によって、甘みと酸味のバランスや香り、歯ざわりが異なります。紅玉は鮮やかな紅色の皮と酸味が特徴で、ジャムやアップルパイなどにもよく用いられます。生で食べると酸味が際立つりんごも、砂糖とともに煮たり焼いたりすると、また違った味わいに変わります。
そのまま味わうほか、焼きりんごや甘煮にして温かくいただくのも、秋らしい楽しみです。店先に並ぶ品種の名に目を向けると、ひと口ごとの味わいの違いにも気づかされます。

撮影: shige hattori / PIXTA
参考文献
『日本を味わう 366日の旬のもの図鑑』淡交社
さんまの水揚量(年)|全国さんま棒受網漁業協同組合
さんま寿司 奈良県 | うちの郷土料理:農林水産省
サツマイモはどこからきたの?:農林水産省
カボチャの品種について教えてください。:農林水産省
農林水産省『aff』2018年10月号
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