五月も半ばに近づくころ、曇り空の日が少しずつ増えてきます。卯の花が咲くこの時期の長雨を、「卯の花腐し(うのはなくたし)」といいます。
卯の花は、初夏に咲くウツギの花です。旧暦四月を「卯月(うづき)」ということから、この花は「卯の花」と呼ばれ、枝いっぱいに小さな白花をつける姿は、この季節の代表的な景色のひとつとして古くから親しまれてきました。
「卯の花腐し」という名は、卯の花を腐らせてしまいそうなほど長く雨が続く、というところから生まれた言葉です。
このころの雨は、梅雨入り前の不安定な空模様とも重なります。激しく降るというよりも、細かな雨が静かに降り続き、若葉の色も、晴れた日の鮮やかさとは異なる深みを帯びて見えてきます。
日本では、雨にもさまざまな名前が与えられてきました。春の菜の花の頃に続く雨を「菜種梅雨(なたねづゆ)」というように、その時期に咲く花や移り変わる景色と結びつけながら、季節ごとの雨が呼び分けられてきました。また、細かな粒の雨を「細雨(さいう)」、音もなく降るような雨を「小糠雨(こぬかあめ)」というように、降り方や雨の強弱による呼び名もあります。「卯の花腐し」もまた、花の咲く時期と重ねられた雨の名のひとつです。
雨に煙る卯の花の白さには、初夏の雨の静けさがよく表れています。
撮影:OKINO/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『淡交新書 茶の湯の銘 季節のことば』淡交社
『茶の湯をまなぶ本 改訂版 茶道文化検定公式テキスト 1級・2級』淡交社
※参考文献のタイトルをクリックすると、【淡交社 本のオンラインショップ】に移動します。
※最新の価格・在庫状況はオンラインショップにてご確認ください。
