五月十五日、京都では葵祭(あおいまつり)が行われます。正式には「賀茂祭(かもまつり)」といい、下鴨神社(賀茂御祖神社〈かもみおやじんじゃ〉)と上賀茂神社(賀茂別雷神社〈かもわけいかづちじんじゃ〉)の例祭です。石清水八幡宮の石清水祭、春日大社の春日祭と並ぶ「三勅祭(さんちょくさい)」の一つとして知られ、古くから朝廷の祭礼として営まれてきました。
祭の中心となるのが、「路頭の儀(ろとうのぎ)」と呼ばれる行列です。京都御所を出発した列は、下鴨神社を経て上賀茂神社へ向かいます。平安装束をまとった人々、牛車(ぎっしゃ)、騎馬の列、楽人たちが都大路をゆっくりと進む姿は、「動く王朝絵巻」とも呼ばれています。
現在の路頭の儀には二つの行列があり、勅使の役目をする近衛使代(このえつかいだい)を中心とする「本列」と、その後ろに斎王代(さいおうだい)を中心とする「斎王代列」が続きます。
本列には、検非違使(けびいし)や御幣櫃(ごへいびつ)を担ぐ白丁(はくちょう)、勅使の乗る牛車、風流傘(ふりゅうがさ)など、王朝儀礼に由来するさまざまな役が並びます。牛車には紫の藤や杜若(かきつばた)の花が飾られ、行列に彩りを添えています。
その後ろを進むのが、斎王代を中心とする「斎王代列」です。もともと賀茂祭では、賀茂両社に奉仕する皇女「斎王」が存在しました。現在は、その役割を受け継ぐ存在として斎王代が選ばれています。
斎王代は、十二単(じゅうにひとえ)をまとい、「心葉(こころば)」と呼ばれる飾りを額につけ、檜扇(ひおうぎ)を手にして輿(こし)に乗ります。髪は「大垂髪(おすべらかし)」と呼ばれる長く垂らした姿に整えられ、「日陰の糸」と呼ばれる白い組紐が添えられます。その姿には、王朝装束ならではの華やかさが見られます。
また、祭を象徴する植物が、二葉葵(ふたばあおい)です。賀茂両社の御神紋でもあるこの植物は、「賀茂葵(かもあおい)」とも呼ばれます。行列では、二葉葵と桂の枝葉を組み合わせた「葵桂(あおいかつら)」が、牛車や衣冠、牛馬などに飾られます。
青葉の風が吹く初夏の京都を、雅な列が静かに進んでいく。葵祭の行列には、長く受け継がれてきた都の祭礼の姿が今も残されています。
写真提供:第67代斎王代 山内彩さん(地歌筝曲演奏家)
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参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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