
しとしとと細かな雨粒が静かに降り続く――春に降る雨は「春雨(はるさめ)」と呼ばれます。
春の雨には、その降り方によってさまざまな呼び名があります。菜の花の咲く頃に降る「菜種梅雨(なたねづゆ)」、霧のように細かく降る「煙雨(えんう)」、静かに降り続く様子を表す「小糠雨(こぬかあめ)」など、それぞれに異なる情景が込められています。
四月上旬は、二十四節気の「清明」にあたり、万物が清らかで明るく見える頃とされます。低気圧と高気圧が交互に通過することで、数日おきに晴れと雨が入れ替わり、それを繰り返すことで気温を押し上げ、草木の生育を促していきます。
また桜の開花と重なるこの時期には、満開の花を散らす雨を「桜流し」と呼ぶこともあります。春の雨は、季節の移ろいと密接に結びついているのです。
和歌や俳句では、こうした雨の細やかな違いが丁寧に言い分けられてきました。降り方や見え方の差異に目を向けることで、同じ雨でも異なるものとして捉える。濡れた土の色、やわらいだ光、かすかに霞む遠景……、春の雨は晴れの日とは異なるかたちで、季節の表情を私たちに見せてくれます。
撮影: t-写真 / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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