五月十日。端午(たんご)の節句が過ぎ、賑やかだった家々も少しずつ落ち着きを取り戻すころ。
役目を終えようとする五月人形が座敷に佇む姿には、この時期ならではの余韻があります。
現在、端午の節句には、鎧兜や武者人形とともに、太刀や軍扇などさまざまな道具が飾られます。その源流は、菖蒲の葉で兜を作った「菖蒲兜(あやめかぶと)」にありました。江戸時代前期には、家の前に槍や幟(のぼり)を立てる勇壮な形式が主流でしたが、後期にかけて室内飾りへと変化し、住まいの中に「武」を映す現在の姿へと整っていきました。
武者人形に表されるのは、源義経や坂田金時(金太郎のモデル)といった歴史や物語の中の英雄たちです。男児の立身出世や健やかな成長を願って飾られてきたその姿も、節句を過ぎた静けさの中では、どこか落ち着いた気配をまとい座敷に馴染んでいます。
こうした武家の意匠は、茶の湯のしつらえの中にも見られます。端午の節句のころには、茶室では兜を写した香合や、槍の鞘を写した「鎗の鞘建水(やりのさやけんすい)」、矢を並べた「矢衾(やぶすま)」を意匠化した風炉先屏風などが取り合わせられます。
節句を過ぎ、片付けを待つわずかな時間。座敷に宿る五月人形は、家族の願いを静かに受け継ぎながら、節句の余韻を静かに留めています。
撮影:チリーズ / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『茶道具に見る 日本の文様と意匠』淡交社
『茶の湯をはじめる本 改訂版 茶道文化検定公式テキスト 4級』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
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