
初夏にさしかかるころ、茶畑にはあざやかな緑が広がります。芽吹いたばかりの新芽が一面を覆い、光を受けて揃う様子は、この時期ならではの風景です。
立春から数えて八十八日目にあたる「八十八夜」は、例年5月1日ごろにめぐってきます。春から初夏へと移る節目にあたり、古くから農作業の目安とされてきました。この日は、茶摘を始める時期の目安ともされ、八十八夜の頃に摘まれた新芽で作る茶は「新茶」と呼ばれます。香り高く、すっきりとした味わいをもつものとして珍重され、この新茶を飲むと無病息災で過ごせるという言い伝えも残っています。
茶の湯で用いられる抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」です。碾茶は、日光を遮る覆下栽培によって育てられ、やわらかく育った新芽、とくに上部の葉を中心に摘み取って作られます。蒸した葉を揉まずに乾燥させたのち、茎や葉脈を取り除いた葉の部分を細かく整えたものが碾茶となり、これを石臼で挽いたものが抹茶です。現在、茶道で用いられる抹茶の多くは、この一番茶を原料としています。
また八十八夜は、稲作とも深く関わっています。種籾を蒔く時期の目安とされるほか、「八」「十」「八」を組み合わせると「米」の字になることから、五穀豊穣を願う吉日としても意識されてきました。
八十八夜は、季節の移り変わりとともに、暮らしの節目として受けとめられてきた日です。
撮影:のあのあ / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
裏千家ホームページ「茶の湯を知る」
山政小山園「抹茶ができるまで」
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