
四月も終わりに近づくころ、水辺では蛙の声が聞こえはじめます。「ケロ、ケロ…」と間をおいて、どこか離れた場所からかすかに届くような響きです。このように、遠くから聞こえてくる蛙の声を「遠蛙」といいます。
日中の気温が上がり、水がぬるみはじめるこの時期、蛙は徐々に活動を始めます。蛙の鳴き声は、主に繁殖期における雄の求愛行動によるもので、水辺に集まりはじめた個体が、少しずつ声を上げはじめます。ただし、盛夏のように一斉に鳴き交わす段階ではなく、まだ鳴き声はまばらです。やがて初夏に向かうにつれて数も増え響き方も変わっていきます。
夕方から夜にかけて、風が落ち着いてくると、遠くの水辺の気配がよりはっきりと伝わってきます。視界には入らない場所の様子を蛙の鳴き声が運んでくる。その距離感を含めて捉えた言葉が「遠蛙」です。
「遠蛙」という言葉は、春の終わりの水辺の気配をそのまま音の印象としてとらえたものといえます。
撮影:ヨコケン / PIXTA
参考文献
『淡交新書 茶の湯の銘 季節のことば』淡交社
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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