
春の景色をあらわす言葉に、「春霞」があります。遠くの山並みがほのかにかすみ、輪郭がやわらいで見える――その移ろいを含んだ眺めは、春ならではのものです。
こうした景色と結びついて親しまれてきたのが、「遠山の図」です。遠くの山を写実的に描くのではなく、重なり合う山並みを象徴的にあらわすこの意匠は、細部まで描き込まないことで、見る者の想像を掻き立て、景色の色どりや季節の気配を感じさせます。
春の山は、空気の湿りや光の加減によって見え方が変わります。はっきりとは見えず、どこかやわらいで感じられる。その印象が、遠山の図と重なります。
また遠山は蒔絵の意匠としても用いられ、棗や炉縁などによく見ることができます。特定の季節に限られるものではありませんが、春霞を想像させるこの時季には、とりわけ取り合わせとして用いやすい意匠といえるでしょう。
撮影:ゆ~や / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『茶道具に見る 日本の文様と意匠』淡交社
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