
十月十八日頃から、七十二候は「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」。二十四節気「寒露」の末候にあたり、秋の虫が戸口の近くで鳴くころを表しています。「蟋蟀」は現在では「こおろぎ」と読みますが、古くは「きりぎりす」とも呼ばれていました。
紀元前11世紀から紀元前6世紀頃に詠まれた詩を集めた中国最古の詩集『詩経(しきょう)』には、農民の一年の暮らしを詠んだ「七月」という詩があります。そのなかに、次のような一節が見られます。
七月在野、八月在宇、九月在戸、十月蟋蟀入我牀下
七月は野に在り、八月は宇(のき)に在り、九月は戸に在り、十月には蟋蟀(しっしゅつ)、我が牀下(しょうか)に入る
七月には野にいたコオロギが、八月には軒下に、九月には戸口に、そして十月には寝床の下に入り込む、という意味です。ここでの月は当時の暦によるもの。季節が移り変わり、寒さが増すにつれて、虫たちが人の暮らす場所へ近づいてくる様子が描かれています。
コオロギは草むらや石の下などに身を隠して暮らす昆虫です。鳴き声を出すのは主にオスで、左右の前翅(まえばね)をこすり合わせて音を出します。また、気温によって鳴き方も変わり、気温が下がると鳴くテンポがゆっくりになります。
秋が深まり、虫の声も次第に少なくなるころ。虫たちの居場所の変化からも、昔の人々は季節の移ろいを感じ取っていたのでしょう。
撮影:のびー / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『茶趣をひろげる歳時記百科』(淡交社)
ホシナ コウヤ「蟋蟀在戸」(tenki.jp、2017年10月18日)
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