
外を歩いていると、ふと甘い香りが漂ってくる。辺りを見回すと、庭先や公園の木に、小さな橙色の花が咲いています。花の姿を見るよりも先に、香りで気づくことの多い金木犀(きんもくせい)。秋の訪れを香りで感じさせてくれる花木です。
金木犀は中国原産の常緑樹で、九月から十月頃に花を咲かせます。濃い緑の葉の間に、小さな花が寄り集まって咲く様子は、近づいて見ると愛らしいものです。
名前の「金」は、金色にも見える花の色にちなみ、また「木犀」は、樹皮の様子が動物の犀(さい)の皮に似ていることから付けられたといわれます。金木犀は、白色や淡い黄色の花を咲かせる銀木犀(ぎんもくせい)の変種とされています。
香りは、記憶と深く結びついています。ある香りをかいだ瞬間、昔の景色や、そのときの気持ちがふいによみがえることがあります。金木犀の香りも、秋の思い出につながる香りの一つです。
例えば、子どもの頃に過ごした秋。祭りで神輿(みこし)を担いだこと、公園でどんぐりを拾ったこと、運動会で友人と声を掛け合ったこと、家族と旅行に出かけたこと……。香りをきっかけに、その日の景色や、一緒に過ごした人たちの顔が、懐かしく浮かんでくることがあります。
いつもの道に漂う金木犀の香り。今年の秋を知らせるとともに、それぞれの心に残る秋へと誘(いざな)ってくれます。
撮影:工場長 / PIXTA(ピクスタ)
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参考文献
森林総合研究所 九州支所「キンモクセイ」
横浜市緑の協会 馬場花木園「キンモクセイ(金木犀)」
ウェザーニュース「『金木犀』と『銀木犀』どう見分ける? 香り・色・葉の違いを解説」