
九月も終わりに近づき、田んぼの稲穂が色づいてきました。実をつけた金色の稲に風が吹くと、穂が次々にたなびき、田の向こうへ波が渡っていくように見えます。この景色を表す言葉が「穂波(ほなみ)」です。
「穂波」は、稲や麦などの穂が風に揺れる様子を、波にたとえた言葉。風そのものは目には見えませんが、一面の穂が同じ方向へなびくと、その動きによって風の通り道が見えてきます。
秋は、風を感じる季節でもあります。そして、実りを迎えた稲にとって、この時季の風は穏やかなものばかりではありません。夏から秋にかけて日本に接近する台風は、強い風や雨をもたらし、収穫を目前にした稲を倒してしまうこともあります。
今年も、日本各地で台風の影響を受けてきました。そして今日29日も、台風26号が日本の南を進み、その影響により各地で風の強まるところがでてきています。
風は、美しい「穂波」をつくる一方で、時に実りを脅かすほどの力をもっています。
風に揺れる稲穂を「波」と見て、「穂波」と名づける。こうした言葉は、季節の移ろいを身近な風景の中に見つめてきた、人々の暮らしの中から生まれてきたのでしょう。
何気なく目にしていた風景も、その名を知ることで、少し違って見えてくることがあります。田のそばを通るとき、風がつくる「穂波」を探してみてはいかがでしょうか。
撮影:kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『二十四節気で親しむ 茶の湯の銘』(淡交社)
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