
九月は、台風などによる風雨が多くなる頃。立春から数えて二百十日目の「二百十日」、二百二十日目の「二百二十日」もこの時季にあたり、古くから人々は強い風による農作物への被害を警戒してきました。
風は目には見えません。しかし、木々を揺らし、雲を運び、ときには大きな災害をもたらします。かつて人々は、そんな人の力ではどうすることもできない風の働きを、神の仕業とも考えました。それが、風を司る「風神」です。
風神の起源は古く、インド最古の聖典とされる『リグ・ヴェーダ』に登場する風の神「ヴァーユ」にまでさかのぼるといわれます。やがて仏教に取り入れられると、仏法を守り、風雨を調える神として信仰されるようになりました。
日本で風神といえば、大きな袋を背負って空を駆ける姿を思い浮かべる人も多いでしょう。この風を生み出す「風袋」を持った風神の姿は、中央アジアやガンダーラなどにそのルーツがあるといわれ、日本にも伝わりました。
その代表的な作例の一つが、京都・三十三間堂に伝わる鎌倉時代の国宝「風神・雷神像」です。そして江戸時代になると、俵屋宗達が国宝《風神雷神図屏風》に、風袋を背負い天空を駆ける風神と雷神を描きました。この屏風は、宗達を代表する作品として現在も広く知られています。
風そのものを見ることはできません。それでも昔の人々は、その目には見えない大きな力を感じ取り、大きな風袋を背負って空を駆ける「風の神」の姿を与えました。
木々が大きく揺れ、雲が流れていく空の景色は、風の神の仕業かもしれません。
撮影:FUTO / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『二十四節気で親しむ 茶の湯の銘』淡交社
蓮華王院 三十三間堂「仏像・風神雷神像」
京都国立博物館「風神雷神図屏風」
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