
細くしなやかな枝に、小さな花をこぼれるように咲かせる萩。秋の七草の一つとして知られ、古くから日本人に愛される花です。
萩はマメ科の落葉低木で、宮城野萩(ミヤギノハギ)や山萩(ヤマハギ)、筑紫萩(ツクシハギ)、錦萩(ニシキハギ)など多くの種類があります。種類によって時期は異なりますが、おおむね七月から十月頃に花を咲かせ、夏から秋へと移り変わる野山を彩ります。
そんな萩は、古くから和歌にも盛んに詠まれてきました。なかでも『万葉集』では、植物のなかで最も多く登場する花で、その数は百四十首余りにのぼります。
萩を詠んだ歌でたびたび登場するのが「鹿」です。萩には「花妻(はなのつま)」という異名があり、萩を鹿の妻に見立てた歌も詠まれました。
大伴旅人は『万葉集』に、
我が岡に さ雄鹿来鳴く 初萩の 花妻問ひに 来鳴くさ雄鹿
と詠んでいます。
岡にやって来て鳴く牡鹿を、咲き始めた萩を妻として慕い訪ねてきたのだと見立てた一首です。秋の野に咲く萩と、妻を求めて鳴く鹿。その二つを重ね合わせることで、秋の情景をより豊かに思い描いていたのでしょう。
こうした「萩と鹿」の取り合わせは、やがて蒔絵や着物をはじめ、さまざまな工芸品の意匠にも表されるようになります。萩だけでなく、鹿や月など秋を象徴するものと組み合わせることで、日本人が思い描く秋の景色が一つの文様のなかに表現されてきました。
万葉の昔から、人々は萩の花に秋の訪れを感じてきました。小さな花を咲かせ、風にしなやかに揺れる萩は、今も昔も変わらず、日本の秋とともにある花なのです。
撮影:みい / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『四季折々の着こなしを知る きもの文様暦』淡交社
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