
立春から数えて二百十日目にあたる雑節「二百十日」から、「二百二十日」頃に吹く秋の風を「野分(のわき)」と呼びます。野の草を吹き分けるように吹く強い風で、台風が訪れやすいこの時季を表す言葉として古くから親しまれてきました。
野分は古典文学にもたびたび登場します。『源氏物語』には「野分」と題された巻があり、「野分、例の年よりもおどろおどろしく、空の色変りて吹き出づ」と、例年よりも激しく吹き出す野分の様子が描かれています。
また『枕草子』では、清少納言が野分の吹き荒れた翌日の、草木が乱れた様子などに趣を見いだしています。
野分の頃は、稲が実りへと向かう大切な時季でもあります。収穫を前にした農作物にとって強い風雨は大敵であり、昔から風雨に注意する頃とされてきました。
現代では、こうした激しい風雨をもたらす台風への警戒がますます重要になっています。気象庁によると、地球温暖化に伴い、将来、日本付近では台風の強度が強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測されています。
野を吹き渡る「野分」から、現代の台風へ。秋の風を表す古い言葉からは、時代を越えて自然の力と向き合ってきた人々の姿が見えてきます。
撮影:gandhi / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『明解 源氏物語五十四帖 あらすじとその舞台』淡交社(絶版)
気象庁・文部科学省『日本の気候変動2025』
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