
夏の終わりから秋にかけて、野原や田んぼの上を飛び交う「赤蜻蛉(あかとんぼ)」。蜻蛉は夏から姿を見せますが、秋に盛りを迎え、稲穂が実りはじめる頃に群れ飛ぶ姿は、秋の訪れを感じさせる風景の一つです。
蜻蛉は古く「秋津(あきつ)」とも呼ばれ、日本人にとって古くから身近な昆虫でした。『日本書紀』には、神武天皇が丘に登って国土を見渡した際、その形を蜻蛉の姿にたとえたことから、日本を「秋津洲(あきつしま)」と呼ぶようになったという故事が記されています。また蜻蛉は「勝虫(かちむし)」とも呼ばれ、武士に好まれて家紋や着物などの文様にも用いられてきました。
茶の湯の道具にも、蜻蛉の意匠を見ることができます。なかでも知られるのが「安南蜻蛉手茶碗」。蜻蛉を描いた呉須が釉とともににじんだように流れ、独特の味わいを生み出しています。ほかにも茶碗や棗、香合や釜の鐶付・地紋など、夏から秋の道具組みに蜻蛉の姿が登場します。
田んぼの上を飛び交う小さな蜻蛉は、さまざまな形で日本の秋の訪れを教えてくれます。
撮影:ヨコケン / PIXTA(ピクスタ)
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『二十四節気で親しむ 茶の湯の銘』淡交社
『茶道具に見る 日本の文様と意匠』淡交社
『茶趣12ヵ月ハンドブック』淡交社
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