年に一度、訪れる「卯の花点前」のお稽古。裏千家十一代・玄々斎宗匠が作られた茶箱点前は、それぞれ四季を告げる名前が付けられており、今回の「卯の花点前」は夏を演出する軽やかなお点前が特徴的です。
長さが約20センチ、幅と高さが約15センチの小さな箱には、お茶を点てるための道具がキュキュッと収められています。茶碗、茶杓、そして棗も、普段使うものよりも小ぶりで、箱に一つずつ道具を入れていく作業はまるで「大人のおままごと」のよう。手が大きい男性には少々、扱い難いかもしれませんが、ミニミニサイズに心ときめかせる女性陣には大人気のお点前です。ちなみに、春は「花」、秋は「月」、冬は「雪」と名付けられており、その中でも「月」の茶箱点前は夏の「卯の花」よりも華やかで、お点前が少々、複雑です。
棗に着せた仕覆の裂地(きれじ)や、道具を清める時に登場する小羽根の存在には温もりが感じられ、秋の訪れを意識した道具の扱いやお点前が印象的です。

さて、「卯の花点前」からなかなか脱出できない私は、今年も先生に「このお点前、初めてですよね?」と尋ねました。年に一度しかお稽古しないお点前は、脳から完全に消去されてしまうという、特殊な体質を持つ私は(ただの言い訳です)、毎回このお点前と新鮮な気持ちで向き合います。
先生の指示通りに手を動かし、丁寧にお点前を続けるように心がけました。
茶箱に収められた茶筅筒から茶筅を取り出す際は、薬指を使います。
西洋では、左手の薬指には心臓へ直接つながる血管が流れていると古くから信じられ、そのため、この指に結婚指輪をはめるようになったともいわれています。また日本では、この指は清潔な指とされ、薬を溶かしたり塗ったりする際に使ったことから「薬指」の名が付いたともいわれ、紅をさす指としても使われてきました。
同じように、薬指で筒の下からポンと茶筅を押し出す。この瞬間、なんとも神聖な気持ちに包まれるのです。
今年の卯の花点前のお稽古が無事に終わり、先生が特別に茶箱コレクションを披露してくださいました。
か、か、か、かわいい!
貴重な道具に対して「かわいい」という表現を使うのは好ましくないとは理解しているものの、真っ先に出てきた言葉でした。赤ちゃんが手に持つような大きさの茶筅や手編みの仕覆、三島焼の小ぶりな茶碗、トキメキを隠せないラブリーなコレクションに一同、キャー!と心の中で叫んでいました。
茶箱はお点前だけではなく、そこに収める小さな道具をコレクションとして楽しめる、大人の遊び心あふれる「贅沢な宝箱」でした。

撮影:北見宗雅
