茶事でいただく濃茶は空腹の胃袋を刺激するので、お茶をお出しする前に亭主は懐石(かいせき)料理を用意します。この「懐石料理」の語源ですが、空腹を紛らわせるため、修行僧が懐に温めた石を当てていたことから「懐石」という言葉が生まれたという説があります。《淡交社の「懐石」に関する書籍はこちらから》
茶事の懐石は、あくまで濃茶をおいしくいただくための食事であり、質素を旨とします。とは言え「茶道会館」の「山里」が用意してくださる懐石料理はいつも美味しくて、見た目も美しく、また食材の味を最大限に活かす丁寧な調理法にはいつも驚かされます。
茶事のメインはお茶なので、料理はあくまで「質素」に。飾り気がなくても、素材の質にこだわり、その味を引き出すのが調理人の仕事なのかもしれません。その心と技術を学ぶべく、今回は「山里」の懐石料理教室に参加させていただきました。
茶道会館では全員、包丁を握らせてもらえる「実践あり」の教室が定期的に開催されています。この日は、月に一度のお稽古に通われている「明風会」の生徒さんたちと一緒に懐石料理のイロハを学ぶことに。
料理長の岡さんのレクチャーを聞いてからグループに分かれ、まずは一人一匹、アジを捌きます。こんなに大きなアジ、見たことない!というくらい立派なアジがまな板に用意されていました。
10年ほど前までは家で魚を捌くこともありましたが、今はスーパーの方に「三枚おろしで!」とお願いしちゃっています。久しぶりに捌くアジをあちこち、方向転換しながら身を骨から剥がしていきました。しばらくすると、見事な三枚おろしが完成。山里の料理人の方々のアドバイスのおかげで、第一ミッション「アジの三枚おろし」はクリアできました。

出汁の取り方、海老真蒸の丸め方、サワラの幽庵焼きなど、実践を交えながら、懐石料理に出てくる献立の説明に耳を傾け、最後はみんなで作った料理をいただきます。
教室では懐石料理をいただくだけではなく、茶事を想定しながら客としてのマナーも学んでいきました。懐石料理には器の数や扱い方、食べ方にも細かいルールがありますが、何よりも亭主の負担にならないように料理をいただくことが大切。
「質素」とは、料理の数や味付け、素材だけでなく、いただき方にも通じるのかもしれません。亭主は、ただ調理するだけではなく、いただく人の気持ちも考えながら料理をお出しし、客はその亭主の想いを受け取って美味しくいただく。
それが本当の「おもてなし」につながるのではないのか……。
自分が手がける茶事に向けてのヒントが散りばめられた時間となりました。

撮影:北見宗雅
