
七月下旬から八月にかけて、梅雨が明けて晴天が続く頃に行われるのが「虫干し(むしぼし)」です。衣類や書物、掛軸、調度品などを陰干しして風を通し、湿気を取り除く日本の伝統的な手入れです。
その名から虫を追い払うためと思われがちですが、本来の目的は、湿気によるカビや虫害を防ぎ、大切な品を長く守ることにあります。高温多湿の日本では、梅雨が明けて空気が乾き始めるこの時季が虫干しに最も適しているとされ、古くから各家庭や寺社で受け継がれてきました。
寺院や博物館では、文化財や古文書を風に通して湿気を払い、保存状態を保つための「曝涼(ばくりょう)」が行われることがあります。これは文化財の「虫干し」ともいえるもので、大切な品々を次の世代へ受け継ぐための重要な手入れです。
曝涼にあわせて、普段は目にする機会の少ない宝物が公開される寺院や博物館もあり、夏の風物詩として親しまれています。
暮らしの道具も、受け継がれてきた文化も、日々の丁寧な手入れがあってこそ長く生き続けます。虫干しは、物を大切に使い続ける日本人の知恵と心を今に伝える夏の風習です。
撮影:takashi355/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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