
この時期、庭先や垣根に木槿(むくげ)の花が咲き始めます。暑さの厳しい夏にも次々と花を咲かせる、アオイ科の落葉低木です。
木槿は中国原産とされ、日本には古くに渡来しました。古くは「あさがお」とも呼ばれ、『万葉集』にもその名が見られるなど、古くから人々に親しまれてきた花です。
木槿の花は、朝に開いて夕方にはしぼむ「一日花」として知られています。その姿は、「槿花一朝の夢」という、人の栄華のはかなさをたとえた故事にも用いられています。しかし、木全体では翌朝になると新しい花がまた開き、秋まで絶えることなく咲き続けます。
茶の湯では、「夏は木槿、冬は椿」といわれるほど、木槿は風炉の季節を代表する茶花です。露をまとって咲く清らかな姿は、夏の朝の茶席に涼やかな趣を添えます。なかでも、白い花弁の中心が紅色に染まる「宗旦木槿」は、千利休の孫である千宗旦が愛したことからその名が付いたと伝えられ、茶人にとりわけ親しまれています。
朝に咲き、その日のうちにしぼむ一輪。そして翌朝には、新たな花が静かに開く。木槿は、限りある一日を大切に生きることの尊さを、私たちにそっと教えてくれる花です。
撮影:雄太/ PIXTA
参考文献
『新版 茶花大事典』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
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