
夏至の末候にあたる七十二候「半夏生(はんげしょうず)」は、七月一日ごろから五日ごろにあたります。半夏(はんげ)とは、生薬として用いられる植物「カラスビシャク」のこと。その半夏が生え始める頃を表した候です。
一方、七月二日ごろには雑節「半夏生(はんげしょう)」を迎えます。七十二候の「半夏生ず」と同じく半夏に由来する名で、古くから田植えを終える目安とされるなど、農作業の節目として大切にされてきました。
半夏生には、「天から毒気が降る」「井戸に蓋をする」「野菜を採らない」などの言い伝えが各地に残っています。一見すると縁起を担いだ禁忌のようですが、田植えを終えた人々が農作業を休み、疲れた身体を労るための知恵であったとも考えられています。
また、半夏生には地域ごとにさまざまな食の風習も伝えられています。関西では、稲が大地にしっかりと根を張るよう願いを込めてタコを食べる習慣があり、福井では焼き鯖、香川ではうどんを食べるなど、それぞれの土地ならではの風習が受け継がれています。
一方、この時季には「ハンゲショウ」という植物も見頃を迎えます。葉の一部が白く染まり、まるで化粧をしたように見える姿が特徴ですが、こちらはドクダミ科の植物であり、七十二候や雑節の由来となった半夏(カラスビシャク)とは別の植物です。同じような名前であることから、混同されることも少なくありません。
茶の湯では、ハンゲショウが茶花として用いられることがあります。白く色づいた葉は夏らしい涼やかさを感じさせ、蒸し暑さが増す頃の茶席に季節の趣を添えます。
七十二候の「半夏生ず」と雑節の「半夏生」。同じ名を持つ二つの暦は、半夏という小さな植物から、季節の節目を感じ、暮らしに生かしてきた人々の知恵を今に伝えています。
撮影:masa/ PIXTA
参考文献
『茶趣12ヵ月ハンドブック』淡交社
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