
七月を迎え、本格的な暑さが始まる頃。冷たい井戸水は、人々に涼をもたらす大切な存在でした。その井戸で水を汲むために使われたのが「釣瓶(つるべ)」です。
茶の湯では、この釣瓶をかたどった「釣瓶水指」が古くから用いられてきました。その始まりは、武野紹鷗が井戸から汲み上げたままの水を木地の釣瓶のまま水屋に置いて用いたことにあると伝えられています。その趣向を千利休が茶席に取り入れ、水指として用いるようになりました。
釣瓶水指は檜(ひのき)などの木地で作られ、水で濡らして用います。二枚の割蓋や一文字形の手付など、実際の釣瓶の姿を写した意匠が特徴です。また、名水を用いる際には、水指の周囲に注連縄(しめなわ)を張る「名水点(めいすいだて)」が行われることもあります。
井戸から汲み上げたばかりの清らかな水を、そのまま茶席へ──。釣瓶水指には、水を何よりも大切にする先人の心が今も受け継がれています。
撮影:しろまる/ PIXTA
参考文献
『淡交別冊 第77号 水指 鑑賞と取り合わせ』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
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