
清流では鮎漁が本格的な季節を迎え、川辺では、釣った鮎を入れるための竹籠「魚籠(びく)」を腰につけた釣り人の姿が見られるようになります。
魚籠は「魚籃(ぎょらん)」とも書き、竹や籐(とう)を編んで作られる実用品です。水切れがよく持ち運びにも適していることから、渓流釣りには欠かせない道具として用いられてきました。
茶の湯では、この魚籠が花入として用いられることがあります。なかでも有名なのが「桂籠(かつらかご)」です。京都の桂川で漁師が腰につけていた魚籠を見た千利休が、その姿を花入に見立てたという逸話が伝えられています。
魚を入れるための道具が、季節の花を生ける茶道具へと生まれ変わる。本来の用途にとらわれず、身近な暮らしの道具に新たな美を見いだす──こうした「見立て」は、茶の湯の大きな魅力の一つです。
撮影:kikisorasido/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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