はなの茶の湯ノオト
~茶事亭主への道~第5回|デコトラ茶室ジャーニー

モデルとして活動するはなさんが綴る、茶の湯のお稽古ノート。

茶道歴10年。それでもお点前はまだまだ手探りで、毎回どこか新しい発見があります。そんな日々の中で、「できないこと」と向き合いながら、茶事の亭主を目指していきます。

くすっと笑ってしまうような出来事も、思わず立ち止まるような気づきもそのままに。少しずつ身体で覚えていく茶の湯の時間を、同じ目線でたどります。

▶連載「はなの茶の湯ノオト ~茶事亭主への道~」はこちらから

Article

記事内容

東京スカイツリーが聳え立つ押上のギャラリーで、アーティスト高橋理子さんの「デコトラ茶室」のお披露目会茶会に参加させていただきました。高橋さんは海外でもご活躍されているアーティストで、大相撲の九重部屋の浴衣や行司の最高位、木村庄之助の装束のデザインもご担当されています。構想から3年。遂に、茶室「装光庵」を乗せたデコトラを完成させました。

子供の頃からデコトラ好きだった高橋さんが、第1号となるトラックと出合ったのが数年前。その荷台を何に改造しよう、と考えていたところ、私のお茶の先生でもある北見宗幸先生が「茶室はどうでしょう?」とご提案。その一言がきっかけで、今回のアバンギャルドでゴージャスなデコトラ茶室が誕生したそうです。

目の前に現れたのは、新品同様に生まれ変わったピカピカなデコトラでした。高橋さんに許可をいただき、運転席のドアを開けて中を見渡すと、車内には煌びやかなシャンデリアと高橋さんのグラフィックデザインが描かれたふかふかな椅子が設置されていました。

「はなさん、スイッチをオンにしてください」

頭上に並ぶ無数のスイッチを切り替えた瞬間、車体に装飾されたカラフルなライトがチカチカと輝き始めました。まるで宇宙船に乗り込んだような気分。このまま違う世界へキューン、と走り出してしまいそうです。

 

 

運転席から今度は荷台へと案内していただきました。後方に設えられた躙口の上には「装光庵」の文字が掲げられています。躙口をくぐり茶室の中へと入っていくと、外観のデコトラが演出していた華やかな世界観とは一変し、外の光が薄く差し込む、静かな空間に迎えられました。

「そうだった、今日は茶会にお招きいただいたんだ!」

デコトラの出現で、自分が茶会に来ていたことをすっかり忘れていました。この日は宗幸先生がお点前をご担当。高橋さんが亭主を務められました。道具は全て高橋さんが手を加えており、特徴的な曲線のアートが随所に散りばめられていました。茶室の壁には今と昔の相撲の番付が腰紙として向かい合わせで貼られています。そして、デコトラのカラフルな電飾の光の粒が象られた可愛らしい主菓子が登場。外と中の世界が融合した瞬間を味わうことができました。

デコトラが「動」だとしたら、この茶室「装光庵」は「静」を表す世界です。「全く違う世界を描きたかった」とおっしゃっていた高橋さんの言葉が、頭の中をスッとよぎりました。静かな茶室を乗せたデコトラが、これから世界へと動いていく。私の「茶室ジャーニー」が再始動した一日でした。

 

 

撮影:北見宗雅

連載「はなの茶の湯ノオト ~茶事亭主への道~」はこちらから

▼おすすめ書籍
はなさんが、建築史の泰斗であり、異色の茶室建築家としても知られる藤森照信氏と全国の名茶室を訪問した『ニッポン茶室ジャーニー』(淡交社)はこちらから

Detail

記事詳細情報

執筆者

はな

はな|神奈川県横浜市出身。2歳から横浜のインターナショナルスクールに通い、17歳からモデルを始める。上智大学比較文化学部比較文化学科で美術史を学び 、テレビ・ラジオなど活動を広げる。現在もファッション誌で活躍するかたわら、FMヨコハマ「Lovely Day~hana金~」(毎週金曜)のナビゲーターをつとめる。2016年に雑誌「淡交」での連載をきっかけにお茶の稽古を始め、これまでに『はな、茶の湯に出会う』『今日もお稽古日和』『ニッポン茶室ジャーニー』(いずれも淡交社刊)などお茶に纏わる書籍を出版。2003年にパンダ大使、2017年に国宝応援大使、2019年に奈良国立博物館評議員に就任。TANKO+では「はなの茶の湯ノオト~茶事亭主への道~」を連載中。

More contents

Explore

紙の本でさらに深く学ぶ

茶の湯を学ぶコンテンツが
読み放題

有料会員になると、200点以上の動画・電子書籍・記事・茶道辞典・イベント情報などのコンテンツをすべてご利用いただけます

月額990円(税込)

いつでも解約可能