デコトラに、茶室を載せる

デコトラの荷台に、本格的な茶室を載せる――。その発想を聞けば、多くの人は意外に思うだろう。しかし、実際に「装光庵」を訪ねると、そこには単なる話題性ではない、本物への強いこだわりが息づいていた。デコトラと茶の湯。一見すると対極に見える二つの文化は、なぜ出会い、どのように一つの空間となったのか。アーティスト・高橋理子氏と裏千家正教授・北見宗幸氏に、その舞台裏を聞いた。

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プロローグ

 

フロントを飾るラッセル戻しのバンパーや看板灯、磨き上げられたステンレスの数々。デコトラ「第八理子丸」の姿は、長い時間をかけて積み重ねられてきた美意識の結晶のようにも見えた。

大きく突き出たバイザーとサイドミラーも目を引く。その先には、高橋理子氏自身を模したメタリックなミニチュアが左右に配されている。

 

 

運転席へ目を向けると、高橋氏がデザインし、自ら張り込んだ金華山織が巡らされている。シートや天井には、同氏を象徴する曲線の抽象文様が繰り返され、「第八理子丸」ならではの空間をつくり出している。

一台の車両に、自らの美意識や物語を積み重ねていく。その文化の奥深さは、一見する外観だけでは語り尽くせない。

だが、「第八理子丸」の真価はここで終わらない。

荷台の扉を開く――。

そこに現れるのは、躙口(にじりぐち)を備えた茶室だ。

デコトラの荷台に設けられたとは思えないその姿に、思わず目を見張る。もちろん単なる演出ではない。茶人が実際に茶を点てることを前提として設計された「茶室」である。

室内は二畳台目。点前座には台目畳を据え、中柱が立つ。限られた荷台空間の中に、さらに茶室という空間を組み込む。その発想からこの茶室は形づくられた。

さらに目を引くのが、床(ゆか)に切られた炉である。

 

 

移動する車両の中にありながら、炉には実際に炭を入れることができる。トラックの荷台の下にはフレームが走っているため、まず炉を切ることのできる位置を定め、そこを起点として柱や床、間取りの構成が決められていったという。

デコトラに、茶室を載せる。

言葉にすると奇抜な発想にも聞こえる。しかし目の前にある空間から伝わってくるのは、話題性よりもむしろ、本物へのこだわりと執念である。

なぜ、ここまでして茶室を作ろうとしたのか。

その答えを探るため、高橋理子氏と北見宗幸氏に話を聞いた。

 

 

第一章 憧れの原点

 

高橋理子氏にとって、デコトラは思いつきで手に入れたものではない。

それは、幼い頃から憧れ続けてきた存在であった。

同氏とデコトラとの原点は幼少期にまでさかのぼる。……

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