
夏を迎えたこの時期。店先には鮮やかな緑色の胡瓜が並び、食卓にも夏らしい彩りが加わります。
胡瓜の魅力の一つは、その瑞々しさと独特の青い香りです。切った瞬間に立ちのぼる爽やかな香りは、夏の訪れを感じさせます。暑さが増してくるこの時期には、冷やした胡瓜を口にするだけでも、どこか涼やかな気分になるものです。
この香りは、初夏の川魚である鮎にも例えられます。鮎は「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれ、川石についた苔を食べて育ったその香りは胡瓜や西瓜に似ているといわれています。季節の食材同士が「香り」によって結び付いているのも興味深いところです。
また、胡瓜は古くから人々の信仰や伝承とも結び付いてきました。河童の好物として知られ、水辺に胡瓜を供える風習が各地に伝わっています。
さらに、胡瓜や瓜に経文や名前などを書き、祈祷を受けたのちに土へ埋める「胡瓜封じ」や「瓜封じ」と呼ばれる行事も各地に見られます。これは病や災いを瓜に移し、封じることを願った民間信仰の一つです。
京都では、祇園祭の期間中に胡瓜を食べることを控える風習も知られています。胡瓜の輪切りが、八坂神社の神紋である木瓜紋(もっこうもん)に似ているためともいわれ、祭りへの敬意を表す習わしとして語り継がれてきました。
「香り」とともに夏の訪れを知らせる胡瓜。その中には、季節の味わいだけでなく、人々の暮らしや信仰の歴史が息づいています。
撮影:freeangle/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『日本を味わう 366日の旬のもの図鑑』淡交社
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