鮎(あゆ)
六月一日頃に鮎漁が解禁される地域も多く、この頃になると若鮎が店先に並びはじめます。鮎は一年魚で、川を遡上しながら成長する魚です。まだ若い鮎は魚体も細く、身にはこの時期ならではの若々しさがあります。
鮎は「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれます。川石についた苔を食べて育つことから、胡瓜や西瓜を思わせる独特の香りを持つためです。表面にはぬめりがあり、手に取ると川魚ならではの張りのある感触があります。
塩焼にすると鮎ならではの香りが際立ちます。まだ骨のやわらかなこの時期の鮎は、細かく切って骨ごと食べる「背越し」や、一夜干しなどに仕立てられることもあり、こうした料理が加わることで、懐石の中にも六月の川の景色が感じられます。
撮影:SHUN/PIXTA
青梅(あおうめ)
梅の実は、初夏にかけて少しずつ大きくなり、六月頃には青梅として出回ります。熟す前の実は硬く、表面には張りがあり、ひんやりとした青さを感じさせます。
この時期になると、梅酒や梅干、梅シロップを仕込む「梅仕事」を始める家庭も多く見られます。まだ青い実を籠に広げているうちに、次第に黄色みを帯び、甘酸っぱい香りがしてきます。
青梅は、そのまま食べるというよりも、時間をかけて味わいへ変えてゆく食材です。甘露煮や梅肉和えとして用いられることもあり、料理の中に爽やかな酸味を添えます。
撮影:SHUN / PIXTA
枇杷(びわ)
枇杷は、やわらかな産毛に包まれた淡い橙色の実をつけます。
果肉はやわらかく、水分を多く含み、甘みの中にほのかな酸味があります。梅雨時期の景色の中では、その淡い色が自然と目に入ります。
枇杷は古くから親しまれてきた果物で、『日本書紀』にもその名が見られます。また、葉は「枇杷葉(びわよう)」として、咳止めや喉を整えるための民間薬にも用いられてきました。
水菓子として用いられることもあり、その形や色合いは、主菓子の意匠にされることもあります。
撮影:SHUN/PIXTA
冬瓜(とうがん)
冬瓜は夏に収穫される野菜ですが、貯蔵性が高く冬まで保存できることから、この名で呼ばれています。六月頃になると、本格的な夏を前に、「走り」の冬瓜が少しずつ出回りはじめます。
表面には細かなうぶ毛が残り、鮮やかな緑色の皮にはみずみずしさがあります。包丁を入れると、内側には真っ白な果肉が広がり、火を通すと半透明に変わっていきます。
味わいは淡白ですが、その分、出汁を含ませることで素材の持ち味が引き立ちます。葛をひいた吸物や冷やし鉢などに用いられることもあり、器の中に涼しさを感じさせる食材です。
撮影:SHUN/PIXTA
新生姜(しんしょうが)
秋に収穫される一般的な生姜に対し、新生姜は初夏に出回る若い生姜です。繊維がやわらかく、水分を多く含んでいるのが特徴で、茎の付け根には淡い紅色が残っています。
辛味は爽やかで、通常の生姜よりも角が少なく、香りがすっと抜けます。甘酢漬けや炊き込みご飯などにも用いられ、この時期らしい軽やかな香味を添えます。
細く切った「針生姜」は、吸物の天盛りとして添えられることもあります。また、焼き魚などに添えられる「はじかみ」も、新生姜ならではの扱いのひとつです。
撮影:SHUN / PIXTA
六月の食材には、水気を含んだものや、香りの立つもの、若々しい辛味を持つものが多く見られます。それらが並ぶことで、梅雨の頃ならではの涼やかな空気が感じられます。
参考文献
『日本を味わう 366日の旬のもの図鑑』淡交社
『茶趣12ヵ月ハンドブック』淡交社
『淡交テキスト 辻留 季節の点心をつくる』淡交社(絶版)
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