新茶(しんちゃ)
立春から数えて八十八日目のころに摘まれる新芽でつくられる茶を「新茶」といいます。一番茶、あるいは「走り茶」とも呼ばれ、一年に数回行われる茶の収穫の中でも、香り高く、澄んだ風味をもつものとされています。
茶の湯で用いられる抹茶の原料は、この時期に摘まれた新芽からつくられます。新茶が出回るころは、茶の生産が本格的に始まる時期でもあります。

撮影:よっちゃん必撮仕事人/PIXTA
絹さや
絹さやは、莢(さや)ごと食べる「えんどう」の一種で、春から初夏にかけて旬を迎えます。いわゆる「さやえんどう」の中でも、豆がふくらむ前の若い状態のものを指し、薄くやわらかな莢と、ほのかな青い香りを持ちます。
野菜でありながら豆の栄養もあわせて摂れる食材で、加熱しても色が変わりにくく、料理の中に初夏の軽やかな印象を添えます。

撮影:rogue / PIXTA
初鰹(はつがつお)
「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」。江戸時代の俳人・山口素堂の句に詠まれているように、初鰹はこの時期の訪れを象徴する存在として古くから知られてきました。
春から初夏にかけて北上する鰹のうち、この時期にとれるものを初鰹といいます。脂は控えめで身が引き締まり、さっぱりとした味わいをもつことから、「走り」の魚として珍重されてきました。
茶席においても季節を感じさせる食材として、向付に用いられることもあります。表面を軽く焼いて香りを添える「たたき」といった調理も、素材の持ち味を引き出す工夫の一つです。

撮影:たれぞう/PIXTA
じゅんさい
じゅんさいは、水中で育つ若芽を食用とする水草で、初夏に旬を迎えます。芽のまわりに透明な「ぬめり」をまとっているのが特徴で、独特のやわらかな口当たりを持ちます。
この「ぬめり」は、水中で新芽を守るために分泌されるもので、収穫の際には一つひとつ手で摘み取られます。
口に含むと、外側の「ぬめり」がなめらかにほどけ、その内側にやわらかな芽の感触が残ります。するりとした感触と、わずかに歯に触れる芯の対比が、この食材ならではの特徴といえます。
吸物や酢の物などに用いられ、見た目にも涼やかで、器の中に水の気配をそのまま写し取るような一品となります。

撮影:Caito/PIXTA
小茄子(こなす)
小茄子は、一般的な茄子よりも早い時期に出回る小ぶりの茄子で、初夏にかけて旬を迎えます。皮がやわらかく、身に締まりがあるのが特徴です。
茄子には多くの品種があり、それぞれに適した調理法があります。たとえば大阪の泉州で作られる水茄子は、灰汁(あく)が少なく水分が多いため、漬物や生食に向くとされます。一方で、茄子は加熱することで味わいが引き立つ食材としても広く用いられてきました。
茶席の料理では、小茄子に味噌を塗って焼く田楽や、漬物として扱われることもあり、こうした一品が加わることで、季節が次の段階へと移りはじめていることが感じられます。

撮影:fotokuro / PIXTA
五月の食材には、若さを感じさせるものと、夏へと向かう気配を含むものとが見られます。それらが並ぶことで、初夏の空気が感じられます。
参考文献
『日本を味わう 366日の旬のもの図鑑』淡交社
『茶趣12ヵ月ハンドブック』淡交社
『淡交テキスト 辻留 季節の点心をつくる』淡交社(絶版)
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