
梅雨の晴れ間や雨上がりの空を見上げると、ふと虹が現れることがあります。
虹は、太陽の光が空気中の水滴によって屈折や反射を繰り返し、赤や橙、黄や緑などさまざまな色に分かれて見える現象です。その鮮やかな彩りは人々の目を楽しませる一方で、古くは不思議なものとして受け止められていました。
中国では虹を陰陽の気の乱れによって生じるものと考え、異変の兆しと見ることもありました。その影響を受けた日本でも、虹は必ずしも吉兆ばかりを意味するものではなかったようです。『万葉集』に虹を詠んだ歌がほとんど見られないのは、こうした受け止め方がその背景にあったのかもしれません。
茶の湯において、虹は銘にも用いられています。金森宗和内箱書付の伊羅保茶碗「虹」は、書き分けによる景色を見どころとする茶碗です。また、樂家三代・道入作の赤樂茶碗「虹」は、飴釉と白釉の掛分と胎土の赤土による彩りが見どころとされています。いずれも、さまざまな色が織りなす景色に、虹の姿を見立てたものと考えられます。
雨上がりの空に現れる虹は、ほどなくして消えてしまいます。それでも、ほんのわずかな時間だけ現れる色とりどりの美しさに、人々は昔も今も心を惹かれ続けているのでしょう。
撮影:えけせてね。/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『茶の湯の銘大百科』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
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