五月も終わりに近づくころ、日中には汗ばむ日も増え、陽射しにも夏らしい強さが感じられるようになります。
そうした頃になると、着物の装いも袷(あわせ)から単衣(ひとえ)へと移りはじめます。単衣は、裏地をつけず一枚で仕立てた着物で、現在では六月と九月に着るものとされています。ただ、近年は気温に合わせて、五月末ごろから単衣を取り入れる場面も増えています。
着物や帯の文様にも、この時期ならではの意匠が見られます。青楓(あおかえで)や紫陽花(あじさい)、杜若(かきつばた)といった初夏の植物に加え、流水(りゅうすい)や観世水(かんぜみず)、光琳水(こうりんみず)など、水の流れを表した文様も多く用いられます。見た目にも涼を感じさせるこうした意匠には、暑さへ向かう季節を心地よく過ごそうとする感覚も重ねられています。
もともと衣替えは、季節の変化に合わせて装いを替える日本の暮らしの習慣でした。気温だけではなく、暦や気候の移ろいを受け取りながら装いを調整していく感覚には、日本の季節感の細やかさも感じられます。
撮影: 大道雪代
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『きもの文様暦』(淡交社)
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