五月も半ばを過ぎるころ、水を張った田に苗を植える「田植え」が各地ではじまります。風のない日には、水面に空や雲が映り込み、その中へ早苗(さなえ)が整然と植えられていきます。
田植えとは、苗代(なわしろ)で育てた苗を、本田へ移し植える作業のことです。しかし、日本において田植えは、単なる農作業というものではありませんでした。稲作を基盤として暮らしてきた日本では、その年の豊かな実りを願い、田の神を迎えて行う神事としての意味も持っていました。
田植えに携わる女性は「早乙女(さおとめ)」と呼ばれ、古くは「植女(うえめ)」ともいい、田の神を祀る役割を担う特別な女性たちを指していました。豊作は女性の霊的な力によってもたらされるという考えもあり、早乙女たちは清浄な姿で田に入ります。
五月五日が身を清める日でもあったことから、田植えに臨む早乙女が、その前日から家に籠もって精進潔斎(しょうじんけっさい)する風習も見られました。こうした習わしにも、田植えが神事として考えられていたことがうかがえます。
一般的な装いは、紺絣(こんがすり)の単衣に赤い襷(たすき)と帯、白い手ぬぐい、そして菅笠(すげがさ)。田に並んで苗を植える姿は、初夏の風物として絵巻や祭礼にも描かれています。
現在では機械による田植えが一般的ですが、各地の神社では「御田植祭(おたうえまつり)」として、田植えの神事が受け継がれています。伊勢神宮の「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」では、10月に催される神嘗祭(かんなめさい)に供える米の早苗を植える儀式が、保存会の奉仕によって古式ゆかしく行われています。
撮影:toktuk / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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