五月の木々の下では、葉が細く巻かれ、小さな包みのようになって落ちていることがあります。「落し文(おとしぶみ)」と呼ばれるものです。
これはオトシブミ科の小さな甲虫が作るもので、楢(なら)や椚(くぬぎ)、栗などの葉を巻き、その中に卵を産みつけます。巻かれた葉はやがて地上へ落ち、その姿が、道ばたにそっと置かれた文のように見えることから、「落し文」と呼ばれるようになりました。
もともと「落し文」とは、口にしにくい想いを書き、人目につく場所へそっと落として相手に読ませる文のことをいいます。この虫の作った葉の巣も、そうした文に見立てられてきました。
季節によって、「鶯(うぐいす)の落し文」「時鳥(ほととぎす)の落し文」などとも呼ばれ、虫が作った巻葉を、季節の鳥が落としていった文に見立てています。
この「落し文」は、和菓子の銘や意匠にも取り入れられてきました。青葉を巻いたような形を映した菓子には、この時期らしい軽やかな意匠が感じられます。
撮影:BandX / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
『淡交新書 茶の湯の銘 季節のことば』淡交社
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