
十一月に入ると、京都の各地の神社では「お火焚き(おひたき)」と呼ばれる火の祭りが行われます。秋の収穫に感謝し、厄除けや無病息災を祈る伝統行事で、京都では古くから親しまれてきました。
お火焚きの起源には諸説あり、宮中で行われてきた「新嘗祭(にいなめさい)」に由来するとも、冬至(とうじ)に向かって弱まる太陽の力が再びよみがえることを願ったものともいわれています。お火焚きは神社だけでなく、京都の町内や商家などでも行われ、商売繁盛や家内安全を願う行事として大切にされてきました。現在もこの風習を受け継いでいるところがあります。
祭りでは、願い事を書いた「火焚串(ひたきぐし)」と呼ばれる木の札などを焚き上げます。なかでも有名なのが、毎年十一月八日に行われる伏見稲荷大社の「火焚祭」です。五穀をはじめ万物を育む稲荷大神の恵みに感謝する祭典で、神苑の祭場では全国から奉納された十数万本もの火焚串が焚き上げられます。神職や参列者が「大祓詞(おおはらえのことば)」を奉唱し、罪や災いを祓い、幸福が訪れることを祈ります。
また京都では、この時期に「お火焚き饅頭」と呼ばれる菓子も親しまれています。餡を包んで蒸し上げた小判形の饅頭で、表面には宝珠をかたどった焼印が押されています。もともとは京都の餅屋が作る庶民の菓子で、火の用心や厄除け、無病息災への願いが込められています。
お火焚きの炎には、自然とともに暮らしてきた人々の想いが込められています。
撮影: 安ちゃん / PIXTA(ピクスタ)
参考資料
伏見稲荷大社公式サイト「火焚祭」
表千家不審菴公式サイト「茶の湯の菓子:お火焚き饅頭」
京都市「京都をつなぐ無形文化遺産」
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