
朝夕の涼しさに、火のぬくもりが恋しくなる時期。十月は、茶室でも深まる秋に合わせて道具の配置を変わります。「中置(なかおき)」です。十月初旬から、炉を開く「開炉(かいろ)」までの時季のしつらえです。
中置とは、風炉の点前で、点前畳の左右中央に風炉を据えること。炭火が入る風炉を客のほうへ近づけ、水指を勝手付へと移します。日ごとに寒さが増すなか、少しでも客に火を近づけ、水を遠ざけようとする心遣いです。
十月は、風炉の季節を締めくくる「名残り」の時季でもあります。そのため、中置では侘びた風情を大切にすることも多く、ときには「やつれ風炉」が用いられます。
やつれ風炉とは、鉄風炉の甑(こしき)と呼ばれる上部の口の部分や肩の一部が欠けたもの、あるいは割れを鎹(かすがい)で継いだものです。なかには、そうした風情を求めて、あえて欠いたものもあります。欠けや繕いを侘びの景色として味わい、過ぎゆく季節を惜しむ名残りの茶に取り入れてきました。
客に近づけた火には、これからの寒さへの心遣いを。やつれ風炉には、風炉の季節を惜しむ想いを。中置のしつらえには、移りゆく季節を受けとめながら、そのひとときを大切にする心が込められています。
撮影:大道雪代
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参考文献
『新版 茶道大辞典』(淡交社)(絶版)
『裏千家茶道 点前教則 7 中置』(淡交社)