
柿が橙色に色づく季節になりました。枝に実る姿にも、店先に並ぶ姿にも、秋の深まりを感じます。歯ざわりのよいものから、熟してとろりとやわらかくなったものまで、その食感はさまざまです。秋の味覚として親しんでいる柿は、食べるだけでなく、暮らしの多くの場面で役立てられてきました。
日本における柿の歴史は古く、奈良時代にはすでに食べられていたとされています。甘柿の歴史を伝えるものとして知られるのが、神奈川県川崎市の「禅寺丸柿(ぜんじまるがき)」。鎌倉時代の建保二年(一二一四)、王禅寺の山中で発見されたと伝わり、日本最古の甘柿といわれています。
一方、渋柿も、干したり渋抜きをしたりすることで食べられてきました。その渋みのもとになるのが「タンニン」という成分です。口にすれば渋いものですが、人々はその性質を道具づくりにも生かしてきました。時間とともに深まる茶褐色の風合いも、柿渋の魅力の一つです。
また、柿の収穫には、実をすべて取らず、枝に一つ二つ残しておく「木守り(きもり)」という風習があります。来年の豊作を願う神様への供え物とも、冬を越す鳥たちのために残すものともいわれます。
実を味わい、渋を生かし、枝には次の実りへの願いを残す。色づく柿の向こうには、自然の恵みに感謝し暮らしてきた人々の知恵と想いが見えてきます。
撮影:コン太くん / PIXTA(ピクスタ)
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参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』(淡交社)