
七十二候の「鴻雁来(こうがんきたる)」。北の地から、冬を過ごすために雁が渡ってくる頃です。九月には「玄鳥去(つばめさる)」で燕を見送りましたが、今度は、冬を日本で過ごす鳥たちを迎える季節となりました。
「鴻雁」とは雁のこと。「雁」は「がん」「かり」などと読みます。鴨よりも大きく、白鳥よりも小さい水鳥の仲間の総称で、真雁(まがん)や雁金(かりがね)、菱喰(ひしくい)などがいます。九月末頃から日本へ渡ってきて、湖や沼、その周辺の田んぼなどで過ごします。
なかでも真雁は、宮城県の県鳥にもなっています。日本に渡ってくる真雁の多くが、県内の蕪栗沼(かぶくりぬま)や伊豆沼(いずぬま)の周辺で冬を越します。この一帯は、白鳥や鴨の仲間も数多く集まる越冬地として知られています。
雁は、古くから秋を象徴する鳥として親しまれてきました。月と雁を組み合わせた絵画や、そうした意匠を施した工芸品も多く、月に秋草や鹿を取り合わせるのと同じように、秋の景色を表す主題となっています。Vの字に列をなして空を飛ぶ雁の姿に、秋の深まりを感じてきたのでしょう。
雁が列をなして飛ぶことを「雁行(がんこう)」といい、実は茶の湯でもこの言葉が用いられます。夜咄(よばなし)の茶事や雨天の際に、客が連なって露地を進む姿を、空を行く雁に見立てたものです。
また、雁には「二季鳥(にきどり・ふたきどり)」という別の呼び名もあります。これは秋に北から渡ってきて、春になると帰っていくことにちなむ名です。春に燕を迎えて雁を見送り、秋には燕を見送って雁を迎える。季節が移ると、身近に見かける鳥たちの顔ぶれも変わっていきます。
撮影:kitahara 6 / PIXTA(ピクスタ)
シリーズ「季節を読む」はこちらから
参考文献