夜長|秋の夜が長くなるころ

Article

記事内容

 

 

9月も下旬、気づけば日が暮れるのがずいぶん早くなりました。

夏にはまだ明るかった時刻にも、いつの間にか辺りは薄暗くなり、吹き抜ける風にかすかな肌寒さを感じます。深まる秋とともに長くなる夜を「夜長(よなが)」といい、秋の季語として親しまれてきました。

実際に一年で最も夜が長いのは冬至(とうじ)のころ。それでも「夜長」が秋を表すのは、夏の短い夜を過ごしたあと、次第に日暮れが早くなり、夜が長くなっていくことを実感する季節だからでしょう。「秋の夜長」という言葉には、単なる時間の長さだけでなく、夏が過ぎ、秋が深まっていくなかでふと感じる哀愁も込められています。

茶道具にも、この「夜長」を銘とする名高い道具があります。藤田美術館が所蔵する千利休作の《二重切竹花入 銘 よなが》です。

天正十八年(一五九〇)、豊臣秀吉の小田原攻めに随行した利休が、伊豆韮山(にらやま)の竹を用いて作ったと伝わる花入で、一本の竹から三つの花入を切り出し、上部を「尺八(しゃくはち)」、中間部を「よなが」、下部を「園城寺(おんじょうじ)」と名付けました。

「よなが」の銘は、竹の節と節の間を「よ」といい、その間隔が長いことに由来すると伝わっていますが、その響きは「夜長」にも通じます。味方の将兵が野営に使った竹の枕から切り出したという伝承もあり、戦に赴いた兵たちが陣中で過ごした長い夜まで想像させる銘です。

秋の夜を表す「夜長」と、一管の竹に名付けられた「よなが」。同じ響きのなかに、季節の趣と茶の湯の物語が重なっています。

 

 

 

 

撮影:terkey / PIXTA(ピクスタ)

参考文献

『二十四節気で親しむ 茶の湯の銘』(淡交社)

『新版 茶道大辞典』(淡交社 絶版)

藤田美術館「二重切竹花入 銘 よなが」

 

※参考文献のタイトルをクリックすると、【淡交社 本のオンラインショップ】に移動します。
※最新の価格・在庫状況はオンラインショップにてご確認ください。

シリーズ「季節を読む」はこちらから

More contents

茶の湯を学ぶコンテンツが
読み放題

有料会員になると、600点以上の動画・電子書籍・記事・茶道辞典・イベント情報などのコンテンツをすべてご利用いただけます

月額990円(税込)

いつでも解約可能