おわら風の盆|初秋の風に舞う

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九月一日から三日にかけて、富山県富山市八尾町で行われる「おわら風の盆」。夕刻、日が傾き、町の景色が次第に落ち着きを帯びるころ、坂の町に三味線や胡弓、太鼓の音が響き始めます。「越中おわら節」に合わせ、編み笠をかぶった踊り手たちが町を流し歩き、おわらの夜が幕を開けます。

「風の盆」とは、もともと富山県で八月下旬から九月上旬に、風害が少ないことを願って設けられた休み日の総称とされています。この時季は、立春から数えて二百十日を迎えるころ。古くから台風などの風害に注意する時季とされ、稲が実りを迎える農家にとって、強い風は大きな脅威でした。

おわら風の盆の始まりは、江戸時代にさかのぼります。その起源には諸説ありますが、元禄十五年(一七〇二)、加賀藩から八尾の町に下された「町建御墨付(まちだておすみつき)」を町衆が取り戻したことを祝い、三日三晩、歌舞音曲とともに町を練り歩いたことが始まりとされています。その賑わいは、のちに盂蘭盆会などを経て、風を鎮めることを願う「風の盆」へと変化していったと伝えられています。

おわら風の盆は、八尾の旧町と呼ばれる11の町で行われています。それぞれの町には「富山県民謡越中八尾おわら保存会」の支部があり、「越中おわら節」の唄と三味線や胡弓、太鼓などの演奏に合わせて、踊り手が町を進む「町流し」や、人々が輪になって踊る「輪踊り」などが繰り広げられます。唄や演奏、踊りは基本的に共通しているものの、男踊りや女踊りの所作、衣装、唄い方などに、町ごとに受け継がれてきた特色を見ることができます。

やがて日が暮れると、八尾の町は昼間とは違った表情を見せ始めます。ぼんぼりの明かりがともる町並みに響く、どこかもの悲しい胡弓の音色。初秋の風を受けながら静かに進む踊りの列には、盛夏の祭りとはまた異なる風情があります。

まだ暑さの残る九月のはじめ。それでも夜になれば、吹く風のなかに少しずつ秋の気配が感じられるようになります。越中八尾の町を包む唄と踊りは、今年も初秋の訪れを告げます。

 

撮影:pirikara / PIXTA(ピクスタ)

参考文献

茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
越中八尾観光協会「おわらの歴史:おわら風の盆の来歴
おわら風の盆行事運営委員会「越中八尾 おわら風の盆
富山市「越中八尾おわら風の盆|富山市公式ウェブサイト

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