
八月十八日ごろから、七十二候は「蒙霧升降(ふかききりまとう)」。深い霧が立ちこめる頃です。
「蒙霧」とは、もうもうと立ちこめる濃い霧のこと。立秋を過ぎても日中には厳しい暑さが続きますが、朝夕には少しずつ涼しさが感じられるようになります。白い霧に包まれる景色もまた、暦の上では秋の訪れを知らせるものとされてきました。
霧は、空気中に含まれる水蒸気が冷やされ、細かな水滴となって空中に浮かぶことで生まれます。そのでき方は土地や気象条件によってさまざまです。たとえば「霧のまち」として知られる京都府亀岡市では、周囲を山に囲まれた盆地の地形から、秋が深まり朝晩の冷え込みが強くなる頃に「丹波霧」が現れます。亀岡盆地を覆う霧を高所から眺めると、一面が雲海のように見え、とても幻想的です。
一方、「蒙霧升降」の頃に実際に多くの霧が見られる土地があります。北海道東部の釧路です。釧路は日本有数の霧の多い地域で、六月から八月には月の半分ほどの日で霧が観測されています。
釧路の夏の霧は、亀岡の霧とは発生の仕組みが異なります。南から流れ込む暖かく湿った空気が、北海道の太平洋岸を流れる冷たい親潮によって冷やされることで「海霧」が発生し、それが風に運ばれて陸地へと流れ込みます。夏の釧路では、街や港、釧路湿原までもが白い霧に包まれることがあります。
春には「霞」、秋には「霧」。日本では古くから、よく似た大気の景色を季節によって異なる言葉で表してきました。春の七十二候には「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」があり、秋には「蒙霧升降」。白く霞む景色の呼び名にも、一年の巡りが映し出されています。
撮影: プロモリンク/ PIXTA(ピクスタ)
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