若宗匠、作家と語り合う
第1回|千 宗史×樂吉左衞門

『月刊 淡交』2023年新年号から2024年12月号まで連載された「若宗匠、作家と語り合う」。本シリーズでは、若宗匠が茶道具を手掛ける工芸作家と、「使い手」と「作り手」、それぞれの立場から茶道具やものづくりについて語り合います。

第一回は、初代長次郎以来四百五十年以上にわたり樂茶碗を作り続ける樂家十六代・樂吉左衞門さん。若宗匠が樂家で自ら作陶した一碗を前に、茶碗の「使いやすさ」、作り手の個性、伝統を受け継ぐことの意味、そして茶の湯に生きる茶碗とは何か――。

掲載当時、誌面では伝えきれなかった新たな写真も交えながら、その対話をあらためてお届けします。

本記事は、『淡交』2023年新年号に掲載されたものを再編集しました。[毎月1回、全24回を順次公開予定]

Article

記事内容

目次

もっと見る

一章 一碗から始まる対話

 

千宗史若宗匠(以下、千) 本日はお忙しい中、有難うございます。

 

樂吉左衞門(以下、樂) こちらこそお招きいただきまして有難うございます。

 

千  今年一年[※]、『淡交』で茶道具を作る作家の方々と対談をする連載を担当することになりまして、その第一回目として旧知の樂さんにご登場いただきました。

 樂茶碗への想いや作陶についての姿勢など、いろいろとお話を伺いたいと思いますが、その前にまずは一服お茶を……。

 

樂  有難うございます。

 

 

千  本日一服差し上げたお茶碗ですが、見覚えはありませんか?

 

樂  そう言われてみれば……、思い出しました。若宗匠が当家に作陶に来られた際に作られた茶碗ですね。

 

千  そうです。今日の道具組を考えている時に、「そういえば、樂さんの御宅で作らせてもらった茶碗があったはず……」と思い出して探してみたんですよ。四角い茶碗を作ったように記憶していたんですが、実際には普通の丸い茶碗でした。ただ、とても点てにくい(笑)。

 

樂  手に取ってじっくりと拝見してみますと、作陶していただいた時の記憶が甦ってきました。

 

 

千  焼成はもちろん樂さんにお願いしたわけですが、造形の部分はどこまでお手伝いしていただきましたっけ?

 

樂  ある程度削られた際に手に取ってみたら少し重さを感じたので「少し削りましょうか」とお聞きしましたら、「いや、全部自分で削る」と仰ったのは覚えています。

 

千  そうだったかもしれない。全ては無理でも出来る範囲のことは自分でやりたいという性質なので。

 

樂  作家や職人ではない宗匠や数寄者の方が造形し、箆(へら)を入れることによって僕らが作るものにはない魅力が出てきますから、そのお考えは大切だと思います。

 

千  以前から「茶碗は使いやすいものこそ」と思っていますが、それを考えるとこの茶碗は全くもって使いづらいんですよね(笑)。でも、重たいから安定感があって、左手を添えなくても点てられそうです。

 

 

樂  確かに重たいですが、割としっくり手に馴染みますね。口造りが薄いと「軽い」と思って持つので重く感じますが、見た目が重そうだと手に取る前から「重い」と感じて持つので、案外、重く感じないんですよ。

 

千  脳が勘違いしないんですかね。それとあまり熱く感じないのも良いかもしれない。割れてしまったから金で繕ってもらったけれど、遠目には金継ぎの部分が、漆黒に稲妻が走っているような景色に見えます。

 

樂  この割れは窯の炎を浴びて生じたものなので、茶碗が新たに生まれてくるエネルギーを感じます。茶碗には、偶然割れてしまったことによって景色が生まれたということはありますね。

 

[写真]若宗匠が樂家で作陶した黒茶碗。漆黒に一筋の金が映える

 

二章 茶碗に表れるもの

千  樂家では茶碗作りを先代から言葉では教わらないと伺ったことがありますが、手本とするようなものはありますか。

 

樂  祖父(覚入)が建てた樂美術館には、歴代の作品が残っていますので、良き学びになります。また、まだ現役でストイックに作陶している父の姿は刺激になります。ただ、身近で多くの作品を見ているので父の茶碗の形に近くなっているということはありますね……

More contents

茶の湯を学ぶコンテンツが
読み放題

有料会員になると、200点以上の動画・電子書籍・記事・茶道辞典・イベント情報などのコンテンツをすべてご利用いただけます

月額990円(税込)

いつでも解約可能