
祇園祭の頃、京都の町家を彩る花が「檜扇(ひおうぎ)」です。まっすぐに広がる扇形の葉が特徴で、その姿が宮中で用いられた檜扇に似ていることから、この名が付けられました。
檜扇はアヤメ科の多年草で、橙色に赤い斑点が入った可憐な花を咲かせます。京都では古くから「祇園祭の花」として親しまれ、山鉾町では祭りの期間になると家々に飾られます。平安時代の『古語拾遺』には、檜で作られた「檜扇」で扇ぐと厄災が鎮まったという故事が伝えられており、その名を持つヒオウギも魔除け・厄除けの花として、疫病退散を願う祇園祭とともに受け継がれてきました。
花が終わると、黒く艶やかな種を実らせます。この種は「射干玉(ぬばたま)」と呼ばれ、その深い黒色にちなみ、『万葉集』をはじめとする和歌では、「夜」「黒」「暗き」「髪」などに掛かる枕詞「ぬばたまの」が用いられました。「ぬばたまの夜」「ぬばたまの黒髪」といった表現は、日本文学を彩る美しい言葉として今日まで受け継がれています。
撮影:サム / PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
宮津市「ヒオウギと鬼伝説」
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