先日、同じ社中の方々が集まる「灰形教室」に参加しました。午前の部には早朝から15名ほどの参加者が集い、教室が開催された茶室には、それぞれが灰形を作るための風炉が並んでいました。受付順に好きな風炉を選び、まずは灰を整えるのに必要な道具「灰匙(はいさじ)」を数本、お借りすることに。
お隣の方が持参されていたマイ灰匙をこっそり見せていただき、それに似た形のものを、教室に用意された箱から厳選します。先が尖ったもの、丸みを帯びたもの、細いもの。灰匙にもこんなに色々な種類があることに、まずは驚かされました。
ふむふむ、と灰匙の形をじっくり観察していると、講師の宗幸先生が茶室に現れました。先生がお手本を見せてくださるということで、私たちは先生の風炉を間近で見られる位置まで移動しました。
灰形といえば、5月から10月にかけて登場する風炉の中に敷き詰められた「灰の形」を表します。私が通うお稽古では予め、灰形が完成された状態で釜が懸けられているので、準備する必要はありません。ただ、他の曜日のお稽古に参加させていただいた時に、灰形の当番をされていた方のお手伝いをしたことがありました。それはもう、くしゃみ一つで組み立てた灰が崩れてしまうのではないかと思うくらい、繊細な作業でした。
まずは、灰形のイメージを頭に描きます。私が思い描いたのはズバリ、鳥取砂丘。あの滑らかな丘を灰で描きたい。イメージだけは膨らむのですが実際に扱ってみると、砂丘どころかデコボコのクレーターが際立つ惑星が生まれてしまいました。しかも、前方の五徳の爪に挟まれた前瓦(まえがわら)は、まるでその惑星に不時着したUFOのようになってしまい、とても清らかなお湯を沸かすための土台には見えません。美しい灰形を作るには慣れもあるかもしれませんが、雑な私が扱うと……精進が必要です。
私たちの参考となる灰形を作り始めた、宗幸先生。マイ灰匙が何本も収められた袋から、その部分に適した一本を取り出します。灰で手前と奥に山を作り、その山を灰匙でスパッと切り、美しいスロープを描き始めました。
先生が灰匙で灰の山を切った瞬間、子供の頃の記憶が蘇ってきました。そうだ、あの灰匙さばきは大好きだった「レディボーデン」アイスクリームのCMに登場するスプーンだ! アイスクリームの絹のように滑らかなテクスチャーを表すために、黄金のスプーンがスッとアイスクリームの山を切り開くシーン。先生の灰匙も黄金色に輝いているように見えてきました。灰形を作るのに、あっちから、こっちから灰匙をササッと操る先生を見ていて、
「自分も出来るかもしれない」
きっと教室に参加していた誰もがそう思っていたに違いありません。
さて、自分の風炉に戻り、先生と同じことをしてみました。山を作って、切る。切り続けても、やっぱりクレーターが発生します。そういえば、前日に作ったショートケーキの生クリームもこんな感じだったな、と今度は灰を生クリームに置き換えていました。生クリームも、灰も、滑らかな質感を表現するのは難しい……。途中、ギブアップしそうになりましたが、独自の灰形にたどり着きました。
斜度が足りない、山になっていないなど、修復不可能な灰形になってしまいましたが、最後は水の気を表す「水」の卦を入れて、完成です。
「灰形はきれいに作ることではなく、火を起こす環境を作ることが大切」
先生の言葉を伺い、自分の風炉の中をもう一度、覗いてみると……炭を入れる場所がありませんでした(苦笑)

最後に、先生が色々な種類の灰を見せてくださいました。灰にも、こんなに種類があるのですね!手間暇かけて作られる灰が、美味しいお湯を育てる環境作りをしてくれる。次に作る灰形は、火を起こすための炭が心地良さそうに寝ている姿を想像しながら制作したいと思います。

撮影:はな
