よく「紅茶の木」「ウーロン茶の木」があると思っている方がいらっしゃいますが、「茶」という飲み物は、チャノキ(学名:Camellia sinensis (L.) O. Kuntze)という品種から作られるもので、製法の違いから紅茶やウーロン茶といった種類に分けられます。
もちろん、薄茶も濃茶も同様で、それぞれの木があるわけではありません。ただし、濃茶を採取する茶の木は樹齢を経た古木である方が望ましいと書かれている書物もあります。
また、「~の昔」は濃茶、「~の白」は薄茶として区別している場合もありますが、中村幸『茶の湯トリビア』淡交社によると、もともとはその区別はなく、古くからの白く仕上げる製法の茶と、緑を鮮やかに仕上げる製法の茶とがあり、江戸初期の小堀遠州の時代に、白茶の最高のものを「初昔」、青茶の最高のものを「後昔」と呼び習わされました。どちらも濃茶であり、現在のような「昔=濃茶」「白=薄茶」という関係ではありませんでした。薄茶とは、茶壺に濃茶の袋を保管する際のクッション代わりにした品質の下がる茶のことで、もともとは銘がなかったようです。
つまり、歴史的に濃茶には上質な抹茶が用いられ、薄茶にはそれに比べて品質の劣る茶が用いられていました。
現代でも一般に濃茶用の抹茶は薄茶用より高価で、濃く練っても渋味や苦味が立ちにくいよう仕立てられています。
薄茶用の抹茶を濃茶と同じような分量で練ることはできますが、渋味や苦味が際立ち、本来の濃茶のような味わいにはならないでしょう。価格を見ても、濃茶は同量で薄茶の三~四倍以上になることも珍しくありません。
お稽古で濃茶の点前をさせていただけるということは、高品質の高価な抹茶を、しかも濃くして点てることをさせていただいているわけですから、そのことを心に留めて、点てたり、いただいたりすべきだと思います。
