
雨の日が多くなる六月。庭や石垣、木の根元などでは、苔がいっそう鮮やかな緑を見せるようになります。
「苔に花が咲く」というと意外に感じるかもしれません。実際には桜や紫陽花のような花ではありませんが、苔も成長の過程で胞子をつくるための器官を伸ばします。その姿が小さな花のように見えることから、「苔の花」と呼ばれてきました。
緑の苔の上に細い柄が立ち上がり、その先に小さな胞子嚢(ほうしのう)を付ける姿は、とても小さいため普段は見過ごしてしまいそうです。紫がかったものや白っぽいものもあり、雨に濡れた苔の上では小さな花のようにも見えます。
苔は古くから日本の庭と深く結びついてきました。京都の西芳寺(さいほうじ)は「苔寺」として知られ、雨に濡れた苔庭の美しさで多くの人々を惹きつけています。
また、「苔の花」は夏の季語でもあります。華やかさはありませんが、その小さな姿に、季節の移ろいや生命の営みを感じることができます。
ふと足元に目を向けると、苔の世界にもこの時期ならではの季節が訪れていることに気づきます。
撮影:kiyusito31/ PIXTA
参考文献
『二十四節気で親しむ 茶の湯の銘』淡交社
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