
菊や牡丹、冠(かむろ)、柳――。夏の夜空を彩る花火には、その姿にちなむ美しい名前が数多くあります。大輪の花のように咲くもの、柳の枝のように光が垂れ下がるものなど、それぞれ異なる趣で人々を楽しませてきました。
花火の歴史は古く、日本では戦国時代に火薬が伝わり、江戸時代には観賞用として大きく発展しました。享保十八年(一七三三)、「両国川開き」で行われた打ち上げ花火は、日本の花火大会の起源とされ、現在の隅田川花火大会へとその伝統が受け継がれています。前年の飢饉や疫病で亡くなった人々を慰霊し、災厄退散を祈る意味も込められていました。
八月になると、全国各地で花火大会が開かれます。夜空いっぱいに広がる大輪の花火はもちろん、河川や湖面に映る光、腹の底まで響く音も、夏ならではの風情です。
一方で、夏の花火は大きな花火大会だけではありません。夕涼みをしながら家族や友人と楽しむ手持ち花火も、日本の夏を彩る身近な風景です。とりわけ線香花火は、小さな火玉が静かに揺れ、やがてぽとりと落ちるまでのわずかな時間に、打ち上げ花火とは異なる趣があります。静かに火を囲み、語らうひとときもまた、日本の夏ならではの思い出として受け継がれています。
撮影:bee/ PIXTA
参考文献
『茶趣をひろげる 歳時記百科』淡交社
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