
明日十一月七日は二十四節気の「立冬」。暦の上では冬が始まります。今日は、過ぎゆく秋を惜しみ、秋の夕暮れを詠んだ「三夕(さんせき)の歌」を紹介します。
三夕の歌とは、『新古今和歌集』に収められた、「秋の夕暮」で結ばれる三首の和歌のことをいいます。
寂蓮法師
寂しさは 其の色としもなかりけり 槙立つ山の 秋の夕暮
寂しさは特定の色にあるのではなく、杉や檜などの常緑樹が立つ山の、秋の夕暮れに感じられるという歌です。
西行法師
心なき 身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮
俗世を離れた身であっても、鴫(しぎ)が飛び立つ沢の秋の夕暮れには、しみじみとした情趣を感じるという歌です。
藤原定家
見わたせば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮
見渡しても春の花や秋の紅葉はなく、ただ海辺に粗末な苫屋(とまや)があるばかり。華やかな景色ではなく、飾り気のない秋の夕暮れに美しさを見いだした一首です。
この定家の歌は、茶の湯とも深い関わりがあります。『南方録』には、武野紹鷗がこの歌に侘び茶の心を見いだしたことが記されています。
秋の終わり、夕暮れの景色に目を向けながら、三人の歌人が詠んだ、それぞれの秋の趣に思いを寄せてみてはいかがでしょうか。
撮影:K@zuTa / PIXTA(ピクスタ)
参考文献・参考サイト
『茶趣12ヵ月ハンドブック』(淡交社)
※参考文献のタイトルをクリックすると、【淡交社 本のオンラインショップ】に移動します。
※最新の価格・在庫状況はオンラインショップにてご確認ください。
シリーズ「季節を読む」はこちらから