私がお稽古に通う土曜日クラスは、お稽古をスタートする時には、すでに道具の準備が全て整った状態です。本来なら水屋準備の仕事は数人ずつ、交代で担当することが多いのですが、すっかり甘やかされてしまっています。
先日、少し早めにお稽古場に到着すると、同じ社中の星崎さんと佐藤さんが道具の準備をコツコツ続ける姿が目に飛び込んできました。棗と茶入に抹茶をはき、水指に水を入れ、道具は全てピカピカに。朝8時前から水屋での準備を始めていらっしゃるそうで、お二人には頭が上がりません。ペコリ。いつも本当にありがとうございます。

この日も星崎さんと佐藤さんが準備してくださった道具を使い、中置(なかおき)のお稽古をしました。中置点前では、半年間お世話になった風炉がセンターに、そして水指は勝手付(かってつき)に移動します。勝手付側のスペースが限られているため、水指は場所をとらない細身で背の高いもの(細水指)を選ぶのがポイントのようです。
亭主から見ると、風炉の左側の勝手付付近は大変混み合っていますが、秋が深まり、肌寒くなってきた季節。釜が放つ暖かな空気をお客さまにお届けしたい。そして、もう少ししたら姿を消してしまう風炉釜の姿を目に焼き付けていただきたい。そんな亭主のおもてなしの心も込められているのでしょう。
さて、早いもので、来月は茶人の正月とも呼ばれる、「炉開き」です。この中置点前は十月にしか登場しませんが、お世話になった風炉への感謝の気持ちを忘れずに行いたい。そして、この時期しか登場しないからこそ毎回、新鮮な気持ちで挑むことができる特別なお点前です。……というのは、忘れてしまう言い訳ですが(笑)。
「炉開き」を控えるこの時期は、お茶の世界が重んじる「侘び」を演出する設えが少しずつ登場します。移り行く季節を惜しむことから「名残(なごり)」とも言われ、茶室からも煌(きら)びやかな景色が消えていきます。私は日本の風情が感じられるこの時期が、とても好き。華やかな色や輝きとは異なる、侘びた世界が放つ、静寂で、ミニマムで、内面的な美しさ。普段は見過ごしてしまうような小さな秋に、今年も目を向けるきっかけになりました。

撮影:はな、北見宗雅
