茶会は亭主と客、とくに正客の存在がなくしては成立しないものです。ところが、映画「日々是好日」※1でも大寄せ茶会での正客決めバトルのシーンが紹介されていたように、大寄せ茶会といえば、正客決めバトルが待合で必ずと言っていいほど展開します。
(※1 映画『日日是好日』(2018年)は、森下典子氏の同名エッセイを原作に、茶道を通して人生の豊かさや季節の美しさを描いた作品です。茶の湯の魅力を広く伝えた映画として親しまれています。)
茶事の場合には、あらかじめ招待状に正客を書いて送るので問題ないはずなのですが、それでも時々、迎え付け時に、連客のはずの方が正客に押し上げられていたりして驚かされることがあります。
私は、男性ですので、もはや正客決めバトルで勝つことはあきらめています。しかし、本来は性別には関係なく、正客は「席主との親しさによって決められるべき」だと考えます。以前に、末席に座った客と席主とが親しげに話していて、ただ男性と言うだけで面識もない正客の私とは、ほとんど話すこともなく席が進んでいくという哀しい経験をしたこともあります。
正客が席主を知らないと、ただの道具の説明会に終わってしまう可能性が高くなってしまいます。茶席をもつからには、席主にはなにか席のテーマ、すなわち「趣向」があるはずなのです。それをうまく酌みとり、席主から一から十まで説明させないようにするのが、ほんとうの正客の務めではないかと私は考えます。
そのためには席主の人となりに詳しい方が正客をすることが一番良いのです。たとえば出身地にちなんだ菓子とか、お仕事に関係した道具とか、そうした説明を席主から待つのではなく、正客から話しかけると、席主を知らない連客にも、席主の人となりが伝わり、席がなごむのではないでしょうか。だから席主も、自身をよく知っている方に正客を務めていただく方が、気分が良いものなのです。
お知り合いということでお勧めすると、「私ごときが」と遠慮される方も多いですが、「慇懃無礼」という言葉もあります。礼儀を尊ぶ茶の湯だからこそ「慇懃無礼」にならないように、心を素直にして、茶友のせっかくの席なのですから、正客として盛り立ててさしあげてはいかがでしょうか。
