茶碗のミカタ第4回|志野茶碗

  • 監修:谷村庄治(茶道古美術商「谷庄」専務)

茶碗の“見方”のコツを、茶道具の目利きである先生に茶道初心者Mが生徒となり一から学ぶシリーズ。 

今回の拝見で あなたの“味方”になる 知識が身につくかも。

第4回は「志野茶碗」を拝見します。

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記事内容

“ 力強さとやわらかさ ”

志野茶碗

モデル:志野草花文茶碗

 

先生  志野茶碗、持った感じはいかがでしょう?

生徒M 手のひらには収まりきらない大きさと迫力がすごい……。ずっしりとした重みも感じて、とにかく力強くて豪快な印象です。

先生  圧倒されるでしょう。「これはちょっと手に負えない!」みたいな(笑)。これが志野茶碗の大きな魅力です。でもそんな強さとは対照的に、胴部には簡素でほのぼのとした〝草花文(そうかもん)〟が描かれています。

生徒M あっ、これ草花(くさばな)なんですね! よく見ると白い肌がやわらかくてきれいで、繊細な一面だなぁ。

 

 

先生  ギャップを感じますよね。この緋色の絵は、鉄絵(てつえ)といって、鉄分を含んだ絵の具などで描かれています。その上から長石釉(ちょうせきゆう)という白い釉薬を掛けて焼くと、掛かり具合が薄いところに絵が出てきます。逆に厚いところは絵のシルエットだけが見える。釉薬の掛かり具合の違いが、図らずも草花の絵に奥行きのある立体感を与えているんです。

生徒M 茜色に染まる夕暮れの風景みたいですね。

先生 その表現、茶人的な茶碗の見方ですね! 高台を見てみると、釉際(くすりぎわ)と呼ばれる土と釉薬の境界線にも、ほら、うっすら緋色が出ています。それと柚子肌(ゆずはだ)のピンホール。ここにも緋色がきれいに出ていると、お茶人さんはうれしくなるものなんですよ。

生徒M あ、釉薬が掛かっていない高台あたりの土はサクサクした軽い土なんですね。意外です。

先生  軽やかな印象でしょう。もぐさ土といいます。

 

 

生徒M 造形の力強さに対する、肌のやわらかさや温かみ……。人気があるのも納得です。ところで志野茶碗っていつごろから焼かれ始めたのですか?

先生  桃山時代(十六世紀末)に美濃国(現在の岐阜県)で焼かれたものです。ただ、同じ美濃の織部焼と比べると、現存する数は少ないようです。おそらく、焼かれた期間がそう長くなかったのでしょう。

生徒M 当時から貴重な茶碗だったんですね。

先生  ところが不思議なことに、今ではこんなに珍重されている志野茶碗ですが、昔は現在ほど脚光を浴びてはいなかったようです。やはり高麗茶碗が主役だったのかもしれません。しかし、昭和五年(一九三〇)に志野焼の古い陶片が美濃で発見されたことをきっかけにブームが起こるんです。

生徒M 茶道具にも流行があって、時代によって評価が変わるんですね。今は何でもない茶碗でも、百年後にはひょっとすると……。夢があるお話!

先生  たしかに夢はありますね(笑)。でも、まずは自分が純粋に惹かれる茶碗と出合うことが大切ですよ。「茜色に染まる夕暮れ」の感性をお忘れなく!

 

 

イラスト:田渕正敏

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記事詳細情報

執筆者プロフィール

谷村庄治

たにむら しょうじ|1975年、石川県生まれ。金沢で明治元年に創業した茶道古美術商「谷庄」専務。

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